大きな地震や台風のあと、スマートフォンが「圏外」になったり、電話がつながらなくなったりすることがあります。原因によって、つながる手段が変わります。
この記事では、総務省の資料をもとに圏外になる仕組みを整理し、2026 年に始まった新しい仕組みも含めて、つながる手段を試す順番をまとめました。
注意
命に関わる通報は、まず 110 番・119 番にかけてください。災害の状況によっては、自分の携帯会社の電波が止まっていても、ほかの会社の電波で緊急通報ができる仕組み(後で説明する JAPAN ローミング)もあります。
圏外になる 3 つのパターン
総務省によると、災害時に携帯電話がつながらなくなる主な原因は、停電、基地局をつなぐケーブル(伝送路)の断線、基地局の機器の故障です。さらに、基地局が動いていても、回線が混み合ってつながりにくくなることがあります。
2024 年の能登半島地震では、携帯各社を合わせて最大 839 の基地局が止まりました(1 月 3 日時点)。止まった原因の内訳は次のとおりです。
| 原因 | 割合 |
|---|---|
| 停電のみ | 38.8% |
| 停電とケーブルの断線の両方 | 29.7% |
| ケーブルの断線のみ | 28.0% |
| 設備の故障 | 3.5% |
停電が関わったものが約 7 割、ケーブルの断線が関わったものが約 6 割です。ここでは、よく起きる 3 つのパターンを説明します。
パターン 1:基地局の停電(時間がたってから圏外になる)
携帯電話の基地局にはバッテリーが備えられていますが、停電が長引くとバッテリーが切れて止まります。地震の直後はつながっていたのに、数時間後や翌日になって圏外になるのはこのパターンです。
国の基準では、市区町村役場などをカバーする基地局に、少なくとも 24 時間の停電対策が義務づけられています(離島や半島の役場などは 72 時間が推奨)。裏を返すと、それ以外の基地局は、停電が長引けば止まる可能性があります。南海トラフ巨大地震の被害想定(2025 年 3 月)でも、携帯電話基地局が止まる割合は、発生直後の 16% から 1 日後には 22% に増えると見込まれています。
パターン 2:ケーブルの断線(復旧に時間がかかる)
基地局そのものは無事でも、基地局と通信網をつなぐ光ファイバーなどのケーブルが、土砂崩れや道路の崩落で切れると通信できなくなります。道路が寸断されると修理の人や機材が入れないため、復旧に時間がかかりやすいのが特徴です。能登半島地震では、携帯各社が船の上に置いた基地局や、衛星回線(Starlink を含む)で基地局をつなぐ方法で応急復旧を進めました。
パターン 3:回線の混雑(アンテナは立つのに電話がつながらない)
基地局が動いていても、大勢が一斉に電話をかけると回線が混み合います。携帯会社は 110 番・119 番などの重要な通信を守るために、一般の音声通話を制限します。総務省のまとめによると、東日本大震災では携帯電話の音声通話が最大 70〜95% 制限された一方、メールなどのパケット通信は、制限しないか、しても最大 30% で一時的でした。
アンテナが立っているのに電話がつながらないときは、かけ直し続けるより、文字で連絡するほうが届きやすいということです。
つながる手段を試す順番
スマートフォンが使いにくくなったら、次の順番で試してください。上ほど手間が少なく、下にいくほど場所や準備が必要になります。
1. 電話より文字で連絡する
混み合っているときは、音声通話より SMS やメッセージアプリ、メールのほうが届きやすくなります。家族への連絡は短い文字で済ませ、電話は必要なときだけにします。スマートフォンの電池の節約にもなります。
2. 他社の電波につなぐ(JAPAN ローミング)
2026 年 4 月 1 日から、自分の携帯会社の設備が災害などで使えなくなったとき、ほかの会社の電波を一時的に使える「JAPAN ローミング」が始まりました。NTT ドコモ、KDDI(au)、沖縄セルラー、ソフトバンク、楽天モバイルの 5 社が対応しています。
- 使えるのは、発動された地域(市区町村単位)だけです。
- 通話・SMS・データ通信(最大 300kbps)ができる方式と、110 番・119 番・118 番の緊急通報だけができる方式があります。
- ネットワークの選択が「自動」なら、発動した地域では自動でつながります。つながらないときは、手動でほかの会社のネットワークを選び、使い終わったら「自動」に戻します。
- 対応している機種が必要です。自分の機種が対応しているかは、各社のサイトで確かめられます。
ただし、地域全体が停電しているときは、ほかの会社の基地局も止まっていることがあります。
3. 空の見える屋外で、衛星とスマホの直接通信を使う
au・ドコモ・ソフトバンクは、Starlink の衛星とスマートフォンが直接つながるサービスを提供しています(au は 2025 年 4 月、ソフトバンクとドコモは 2026 年 4 月に開始)。対象の料金プランなら追加料金なしで(一部のプランは有料のオプション)、圏外の場所でも SMS などの文字のやりとりや、一部のアプリの通信ができます。
- 空が見える屋外でしか使えません。屋内、地下、トンネルの中では使えません。
- 携帯の電波が届く場所では使われず、圏外のときだけ衛星につながります。
- 使えるアプリや機能は携帯会社によって違います。対応機種と対象プランを、各社のサイトで確かめておきましょう。
4. 無料 Wi-Fi「00000JAPAN」につなぐ
大きな災害のときは、携帯会社などが公衆無線 LAN を無料で開放します。Wi-Fi の一覧に「00000JAPAN(ファイブゼロ・ジャパン)」と表示されたら、契約している会社に関係なく、誰でもパスワードなしで使えます。2016 年の熊本地震では九州全域で最大約 5 万 5 千か所が開放され、2024 年の能登半島地震でも石川・新潟・富山・福井の 4 県で開放されました。
誰でも使えるように、通信は暗号化されていません。ID やパスワード、カード番号などの入力は避け、同じ名前の偽のアクセスポイントにも注意してください。
5. 災害用伝言サービスを使う
家族と連絡がとれないときは、伝言を残して確かめ合います。
- 災害用伝言ダイヤル「171」:固定電話・携帯電話・公衆電話から、声の伝言を録音・再生できます。
- 災害用伝言板(web171):インターネットで文字の伝言を登録・確認できます。
- 携帯各社の災害用伝言板:各社のサイトやアプリから使えます。
どれも毎月 1 日・15 日などに体験利用ができます。家族で一度試しておくと、いざというときに迷いません。
6. 公衆電話・避難所の特設公衆電話を使う
公衆電話は、災害時も優先してつながるように扱われています。避難所には、無料で使える特設公衆電話が置かれることもあります。普段から、家の近くの公衆電話の場所を確かめておきましょう。
家に備えておくと強い手段
スマートフォンだけの手段は、地域の基地局や他社の電波、空の見える場所に左右されます。災害で孤立しやすい地域では、地域の設備に頼らない手段を家に備えておくと安心です。
| 手段 | 地域の基地局が止まったとき | できること | 必要なもの |
|---|---|---|---|
| Starlink(家庭用の衛星インターネット) | 使える | 家族全員が Wi-Fi でふだんどおりネットを使える | 空の見える設置場所と電源。月額料金 |
| 衛星とスマホの直接通信 | 使える | 文字のやりとり、一部のアプリ | 対応機種と対象プラン。空の見える屋外 |
| 衛星電話 | 使える | 通話が中心 | 専用の端末と契約。費用は高め |
| 無線機 | 使える | 家族や近所との近い距離の連絡 | 無線機(種類によっては免許や登録) |
Starlink は、地域の光回線や基地局が止まっても、衛星経由でネットにつながります。電源さえあれば、家の Wi-Fi で家族全員がふだんのアプリを使えるのが、スマートフォンの衛星通信との大きな違いです。停電中の電源の考え方は「停電時に Starlink は何時間動く?ポータブル電源の容量と電源構成の正解」、手段ごとの比較は「災害時の通信手段を比較|Starlink・衛星電話・複数キャリア eSIM・無線機はどれが正解か」で詳しく解説しています。
今のうちにやっておくこと
- 未完了: 家族で、連絡の手段(文字・伝言サービス)と集合場所を決めておく
- 未完了: 自分のスマートフォンが JAPAN ローミングと、衛星とスマホの直接通信に対応しているか、各社のサイトで確かめる
- 未完了: 災害用伝言ダイヤル 171 と web171 を、体験利用日に家族で試す
- 未完了: モバイルバッテリーを満充電にしておく
- 未完了: 家の近くの公衆電話と、避難所の場所を確かめる
住んでいる地域が災害で孤立しやすいかどうかは、孤立リスク診断で確かめられます。