この記事の結論
災害時の通信は「一つに頼らない」が原則です。費用対効果の順に eSIM 2 回線 → Starlink → スマホ衛星通信 → 無線機 と積み上げ、住んでいる場所によって Starlink をどこに置くかを決めます。
比較表
| 手段 | 初期費用 | 月額 | できること | 弱点 |
|---|---|---|---|---|
| eSIM 2 回線 | 0 円 | 300〜1,000 円 | 通話・データ(基地局が生きていれば) | 基地局停電・広域障害には無力 |
| Starlink | 34,800〜55,000 円 | 4,600 円〜 | インターネット全般。家族全員で使える | 電源が必要。空が開いた場所限定 |
| 衛星電話 | 10〜20 万円 | 5,000 円前後+通話料 | 音声通話・SMS | データはほぼ不可。高額 |
| スマホ衛星通信 | 0 円(対応機種) | 0〜数百円 | テキスト・位置情報 | 屋外で空に向ける必要。速度極小 |
| 特定小電力無線 | 数千円 | 0 円 | 数百 m の家族間通話 | 相手も無線機が必要 |
| アマチュア無線 | 数万円 | 0 円 | 遠距離通信 | 免許が必要。相手も無線 |
都市部:まず eSIM 2 回線
都市部は複数キャリアの基地局が重なっているので、1 社が落ちても別の 1 社が生きている確率が高い。主回線と異なる網のキャリアを eSIM で追加するだけで、月数百円で通信の冗長性が手に入ります。
これで足りない場面は「広域停電で全キャリアの基地局が止まる」ケースです。北海道胆振東部地震のブラックアウトや、房総半島台風の長期停電がこれに当たります。ここまで備えたい人が次の Starlink に進みます。
山間部・沿岸・離島:Starlink が主役
携帯が 1 社しか入らない、屋内で圏外になる、道路が 1 本しかない。こうした家は、災害時に基地局の復旧も移動基地局の投入も最後になります。
Starlink は基地局に依存しないので、この「復旧待ち」を丸ごと飛ばせます。能登半島地震で自治体とキャリアが避難所に配備したのも、この理由からです。
自分の家がどちらに当たるかは孤立リスク診断で確認できます。
衛星電話は「通話だけでいい組織」向け
衛星電話は長年、災害時の切り札でした。ただ、端末と通話料が高く、できるのは音声と SMS だけ。家族で LINE を使い、ニュースを見て、動画で状況を伝える時代には、Starlink の方が圧倒的に実用的です。
自治体や企業の BCP で「確実に通話がつながること」だけを求めるなら今も価値がありますが、個人・家庭が最初に買うものではありません。
スマホの衛星通信は最後の砦
iPhone や一部 Android の衛星経由メッセージ機能は、圏外で「無事」とだけ伝えるには十分です。ただし屋外で空に向けて、数十秒〜数分かけてテキストを送る仕組みで、家族全員の通信手段にはなりません。
Starlink と競合するものではなく、「Starlink の電源が切れたあとの最後の手段」と位置づけると整理しやすいです。
無線機は家族内・近所用
特定小電力無線(免許不要)は、避難所と自宅、家族同士が数百 m 以内にいるときの連絡に向きます。数千円で買えて電池で動くので、Starlink の補助として持っておく価値があります。
アマチュア無線は免許と機材が必要で、相手も無線家である必要があるため、一般家庭の主要手段にはなりません。
積み上げ方の結論
- 全員:eSIM 2 回線(月数百円)
- 山間・沿岸・離島、または実家が該当:Starlink + ポータブル電源
- 対応スマホを持っている人:衛星メッセージ機能の設定だけ確認しておく
- 家族が別々に避難する可能性がある:特定小電力無線を 2 台
まとめ
- 都市部は eSIM 2 回線が最優先で、費用対効果が最も高い
- 基地局が止まる地域は Starlink が代替不能
- 衛星電話は通話専用で高額。家庭の第一選択ではない
- スマホ衛星通信と無線機は、Starlink の補助として位置づける